売電収入による確定申告
太陽光発電システム、ソーラーパネルの設置に伴い、全量・余剰電力を電力会社に売電した場合、法人では全て、個人では一定規模を上回ると確定申告の必要が生じます。
太陽光発電の売電による確定申告:法人の場合
法人が売電により得た収入については、売上または雑収入として益金に計上します。
一方、太陽光発電設備の減価償却費やメンテナンス費用、固定資産税、発電設備に係る借入利息等を経費として損金に計上します。
この場合の減価償却に係る耐用年数は、設備の使用状況等を鑑みて、耐用年数の適用等に関する取扱い通達に従い決めて行きます。
例えば、全量売電する場合であれば、機械装置として耐用年数17年が採用されます(後述する「個人の方」も同様の取扱いとなります)。
太陽光発電の売電による確定申告:個人の場合
所得の区分
個人であれば「事業所得」「雑所得」「不動産所得」の何れに該当するかにより、青色申告特別控除やグリーン投資減税の適用対象になるか否かが相違するため、一つのポイントとなります。
- 売電を事業として行う場合
・・・事業所得または雑所得 - 現に営んでいる事業に附随して売電を行う場合
・・・事業所得または不動産所得 - 太陽光発電設備を家庭用として使用し、余剰電力を売電する場合
・・・雑所得
〇 発電される電力を事業所得を生ずる業務の用に供する場合
この場合、太陽光発電設備は事業用資産に該当しますので、余剰電力の売電収入は全て「事業所得」となります。
〇 賃貸不動産に設置した場合
発電される電力を共用部分等で使用する電気に使用し余剰電力を売電する場合は、不動産所得の必要経費となる電気代を減少させることになるため、「不動産所得」となります。
一方、全量売電の場合には、不動産所得と関連がないことから、基本的には「雑所得」となります。
全量売電の場合の所得は「事業所得」or「雑所得」?
全量売電の場合、社会通念上、事業として認められるか否かにより「事業所得」と「雑所得」とに分類されます。
参考として、資源エネルギー庁のHPにおいて、次の様な場合は一般的に「事業所得」に該当するであろうとの紹介が成されています。
- 電気主任技術者の選任を行っている場合(出力量50kW以上の場合)
- 出力量50kW未満であっても、一定の管理を行っている場合
① 土地の上に設備を設置した場合で、当該設備の周囲にフェンス等を設置している
② 土地の上に設備を設置した場合で、当該設備の周囲の除草や除雪等を行っている
③ 建物の上に設備を設置した場合で、当該設備に係る除雪等を行っている
④ 賃借した建物や土地の上に設備を設置したとき
つまり、自己の危険と責任において発電設備を設けて売電を行っている場合は「事業所得」に該当する可能性が高く、自宅に設営した余剰電力を売電する場合には「雑所得」に該当します。
「雑所得」に該当する場合の、所得税確定申告の必要性の有無は、『確定申告が必要となる方』をご参照ください。
グリーン投資減税による節税対策
エネルギー環境負荷低減推進税制(グリーン投資減税)を、平成28年3月31日まで適用することができます(租税特別措置法第10条の2の2)。
適用対象
- 青色申告書を提出する法人
- 青色申告書を提出する個人
※「事業所得」が対象となりますので、「雑所得」の場合は適用対象外となります。
適用期間
- 100%即時償却・・・平成25年4月1日から平成27年3月31日
- 30%即時償却 ・・・平成25年4月1日から平成28年3月31日
- 税額控除 ・・・ 〃
適用要件
- 適用期間内に取得し、取得の日から1年以内に事業の用に供すること
- 固定価格買取制度の認定を受けた発電設備であること
- 出力量が10kW以上であること
※国や地方公共団体から受けた補助金等により取得等した場合は、対象外となります。
※事業の用に供した日とは、系統連系工事が完了した時点、つまり、電力需給開始日、となります。
電力会社の都合により系統連系工事に遅れが生じた場合には、当初予定されていた系統連系工事の実施日を事業の用に供した日とすることも認められています。
減税の効果
特別償却制度
取得価額の100%または30%を初年度に償却する制度であります。
冒頭に紹介した耐用年数による減価償却費の総額に変動はありませんので、費用を前倒しで計上する制度となります。いわゆる課税の繰り延べになります。
税額控除制度
資本金1億円以下の法人、大企業の子会社以外に適用となる制度であります。
個人も適用対象となります。
取得価額の7%を算出した税額から控除することができます。
上限があり、法人の場合は法人税額の20%、個人の場合は事業所得に係る所得税の20%が限度となっていますが、控除しきれなかったものについては、1年間の繰り越しが認められています。
設置初年度では、慎重に手続きを踏むことにより初期投資に係る「消費税の還付」も狙うことができます。
その他、地方公共団体に提出する「償却資産申告書」も所得税確定申告とセットで手続きいたします。