役員報酬について:法人税の規定
役員報酬の考え方
役員に対する給与は、税務・会計上「役員報酬」という勘定科目で計上されます。
この「役員報酬」について、どのような規定があるのかをご紹介いたします。
法人税においては、役員の範囲を厳格に定めています。取締役や監査役というポストでなくとも、みなし役員という規定があります。このみなし役員に該当すると、法人税法上の役員給与の規定が適用されることになります。
>>「法人税における役員の範囲」はこちらをご覧ください。
会社法上、役員とは株主から経営の委託を受けた人、という概念になります。したがって雇用契約ではなく、委任契約ということになります。
中小企業の場合、決算期末から2か月以内に株主総会を開催します。そこで、決算数値の報告や役員の選任、当該役員に対する報酬額を決めていきます。ここで決められた報酬の額が、その役員の1年間の「給与」ということになります。
法人税法上の役員給与についての取扱い
法人税法上、役員給与は次のいずれかに該当する場合に限り、損金に算入することができます。
なお、いずれの場合も、不相当に高額な部分については否認されます。
- 定期同額給与(法人税法34条1項)
毎月同額で、支給時期が一定期間ごとである給与 - 事前確定届出給与(法人税法34条2項)
所定の時期に確定額を支給する定めに基づいて支給する給与で、予め所轄税務署長に届け出たもの - 利益連動給与(法人税法34条3項)
同族会社以外の法人で、業績に連動して支給するもの
上記のうち、最後の「利益連動給与」については同族会社の適用はないため、中手企業にはあまり関係がないものと思われます。
毎年の役員給与の設定を考える上では、「定期同額給与」の規定を念頭に考えていかなければなりません。
定期同額給与とは!?
定期同額給与とは、法人税法34条1項で、
と規定されています。
つまり、利益操作を防止することを目的に、
・毎月の支給額
・毎月の支給日
が一定であるものをいいます。
この要件に準拠した場合には損金算入が認められます。
したがって、毎月50万円の設定のところ、〇〇月は50万円、〇〇月は30万円、〇〇月は70万円といった支給状況では、平均すると50万円になりますが、これでは認められないということになります。
この場合、支給額の一番少ない30万円が基準となりますので、それを超えた額(20万円+40万円)については、損金不算入になってしまいます。
※説明の便宜上、設立初年度で第1期事業年度が3か月の場合を想定しています。
事前確定届出給与とは!?
事前確定届出給与とは、法人税法34条2項で、
と規定されています。
つまり、役員に対するボーナスとイメージいただくとわかりやすいと思われます。
但し、この場合にも拘束があります。
〇月〇日に***円
といった様に、予め支給日と支給額を届け出なければなりません。更に、その届け出通りに支給する必要があります。日付や金額が相違すると損金には算入することができません。
したがって、事前確定届出給与の支給には、若干のリスクはあると思われます。
役員報酬の設定のポイント
上で見たように、役員給与については利益操作を防止する観点からきつい縛りがあります。
事前確定届出給与については、届出書に記載した日付、金額通りに支給することが要件となるため、資金繰りや経営環境の変化等から、支給が難しくなるケースも想定されます。
このような場合でも、明らかな資金繰り悪化でない限り、実際の支給額と届け出額との間で差が生じた場合は、損金不算入となり、反射的に所得が大きくなるため余計な税金を支払うことになってしまいます。
当事務所では、事前確定届出給与は殆ど活用いたしません。
定期同額給与に、事前確定届出給与として支給する金額を含めて、毎年の役員報酬の額を決定しています。こうすることにより、毎月一定額のキャッシュアウトであるため、中長期の資金繰りを立てることが容易になります。
なお、定期同額給与は、期首から3か月以内の改定は認められています。
この期間内に、役員として欲しい金額、会社の資金繰りから支給できる金額、所得税と法人税のバランス、等を総合的に勘案して、向こう1年間の報酬を決めております。
役員報酬の額の設定は、くれぐれも慎重に行う必要があります。