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論文┃おわりに

おわりに

地方分権時代に、独自課税としての環境税、とりわけ産廃税の課税は、租税制度と環境との統合のあり方について多大な影響を与えるであろうことは確実である。現在のところ、環境税の概念としては一般的に、環境阻害的取引を抑制することを目的とするものであり、あくまで直接規制の補完的な役割であって、財源調達を目的とするものではないとされている。しかし、本稿において概観した産廃税に関しては、これらの二面性を有するものであり、産業廃棄物処理施設の周辺整備に係る費用等を調達することを第一義とするもので、副次的な論点としてインセンティブ効果を期待するものであることを確認した。そして、これをもって「租税」には該当しないという理論についても排除できることを論じた。なぜなら、多少なりとも財源の調達が見込まれるからであり、また、法定外税の消極要件である第二号および第三号要件への抵触についても、産業廃棄物のようなマイナスの価値を持つものが「物」とは呼ぶにふさわしくない と解する余地があるため、問題はないと考えられる。
これまで産廃税を導入した地方団体は、既存の政策手法と組み合わせて産業廃棄物の減量化等を推進すると共に、財政難の渦中において新たな財源確保のために税を導入する動きがある。当該税収を充当して、政策の強化を図ることは、地域の実情に応じたものであると考えられるが、周辺地域との調整も視野に入れて検討が進められなければならない。なぜなら、課税対象である産業廃棄物は、広域に移動可能な物体だからである。
環境分野における汚染者負担の原則に準じて排出課税を過度に強調することは、多量に産業廃棄物を排出する地方団体の税収が増えることとなり、排出地と処分地が異なる場合には、地方団体間において租税紛争が発生する可能性がある。その他免税点の設定により、公平性を害し、「狙い撃ち」課税としての性質を有することとなる。
このような県際排出に係る課税管轄権については、必ずしも明確な基準が存在するわけでないが、環境に係る事象のボーダーレス性に照らせば、産廃税の設計においては複数団体相互間の協調が不可欠であると思われる。地方団体は、中間処理業者や最終処分業者からの実績報告書、マニフェスト制度等によって、排出から最終処分段階に至るまで、産業廃棄物の流通量と経路を把握することができる。しかし、滋賀県の例で見たように、単独で汚染者負担の原則を強調して排出課税を採用しても、結局は、課税免除を適用することにより最終処分課税とその実態は変わるものではなくなってしまう。そこで、みなし規定により税の転嫁の問題を解決し、納税事務負担や税務執行面を配慮して、さらには課税の公平性を担保することができると考えられる最終処分課税を採用し、かつ、中国3県や東北北3県(青森県・秋田県・岩手県)のように広域で実施することが望ましい産廃税のあり方となっていくのではないだろうかと考える。
現在にまで税収が確定しているのは、平成14年度から施行されている三重県のみである。したがって、産廃税の効果を比較することはできないが、若干の整理をしておく。平成14年度の三重県における産廃税に係る税収は約1億3千万円とされ 、制定時での税収見込み額は約4億円と推計されていたことから、実際収入額は50%以下となった。当初見込み額は、平成10年度の産業廃棄物の実績ベースでの算出に係るものであり、排出量が減少したためにそれと比例して税収が減少したのである。この排出量減量の要因として三重県では、「景気動向の影響やISO等の企業の環境に対する取組みが活発になったこと、さらには三重県の環境に係る施策等、その他産廃税導入の事前アナウンス効果があいまって生じたもの」と考えているとのことである 。産業廃棄物を取り巻く状況は近年非常に厳しく、排出事業者自らによる産業廃棄物の減量化に取り組んでいるが、今次の税制度の導入は、そのような動きにさらに拍車を駆けたこととなったのであろう。この結果、三重県での最終処分量が平成10年度実績で70万トンであったのに対し、平成13年度では不法投棄が増加したわけでもなく、28万トンにまで減少している(国全体で見た場合、平成10年度実績で5,800万トン、平成11年度実績で5,000万トン、平成12年度実績で4,500万トンに減少している)。
また、その他のインセンティブ効果として、監視指導体制の拡充による常時監視を実現し、不法投棄等の従来からの懸案事項についても改善方向に向かいつつあるとのことである 。したがって産廃税は、導入時の目的のうちインセンティブ効果については充分にその機能を発揮できているのではなかろうか。
しかし、大幅な税収減のため、予定していた当該税収による事業については、現在精査し、一部の事業の廃止を含めた方向で再検討中である。環境税は、その目的が達成されるにつれ、税収が減少していくこととなることから、環境税の代替としての法定外税は、現行の法定地方税の補完的な位置づけとして留め、その税収に係る施策の立案に関しては充分にそれらを踏まえて設計しなければならないことが証明されている。
最後に今までの考察を踏まえ、地方団体における法定外税の導入について今後の課題と方向性を探ることとする。
最近の動きとして、本年6月に発表された政府税制調査会中期答申で、「課税自主権の活用は、地域における受益と負担の関係の明確化につながるものであり、これをさらに活用しやすくなるよう検討を進める必要がある」と答申し、これを受けて総務省は、「制限税率の緩和と法定外税への総務大臣の同意の緩和」を検討し、地方税法の改正を検討している 。その背景には、現在進められている「三位一体の改革」により、補助金や地方交付税と国から地方への税源移譲の問題等が含まれているであろうことは容易に推測できる。このような新たな動きを踏まえると、分権時代における地方財政制度との関係において、法定外税は税収規模の面からは既存の法定税の補完的な役割を担うのみに留まるであろうが、地方団体が課税自主権を活用して新税を制定・運用することは、将来に実施されるであろう税源移譲を見据えた上では、有効な手段になるであろうと思われる。

※58 碓井・前掲注28,17-32頁.
※59 同年度決算額での歳入総額は7,540億円であり、そのうち地方税収は2,043億円である。
※60 三重県事務事業評価・環境基盤整備の推進を参照
※61 三重県廃棄物対策チームからのヒアリングによる。
※62 日本経済新聞・朝刊2003年6月18日付
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