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論文┃summary

 
題目:分権時代における地方課税 ~法定外税を手掛かりとして~

執筆年:2004年3月

執筆者:松尾 武明

Summary

 行政ニーズが多様化、複雑化する中で、住民に密着した行政サービスを担う地方団体の果たすべき役割はますます大きくなってきている。しかし、住民の多様な要請に応えるためには多くの歳入が確保されなければならない。地方自治の基本原則に関しては、日本国憲法第92条は、「地方公共団体の組織及び運営に関する事項は、地方自治の本旨に基づいて、法律でこれを定める」と規定し、地方団体は各種の機能を有している。これら機能を遂行するためには財政の裏づけが不可欠であり、この財政的な裏づけの基礎となるのが「租税」である。

 ところで、近年、地方税を取り巻く環境は、地方分権化、課税自主権化、税源配分の方向に向けてドラスチックに変化しつつあり、地方税の立法問題が大きく取沙汰されている。その具体の例として、東京都におけるいわゆる「銀行税」に係る訴訟問題、多数の地方団体による独自課税、法人事業税における外形標準課税問題等を挙げることができる。これらの動きの背景には、平成12年度より施行された地方分権一括法による地方団体の課税自主権の強化によるところが大きい。

 そこで、本稿では、地方分権一括法における地方税法の改正のうち、法定外税に着眼点を据え、分権時代における地方課税について言及していくこととした。
 まず、地方税の現状および国と地方の枠組みの変化について確認した。バブル経済崩壊頃までは事業税と住民税の伸びが地方税の伸びを支える形になっていたが、崩壊以後は両税の落ち込みによって、地方税全体が下落している。つまり、今後は、地方税の自然増収は期待できない状況にあり、特定の税目が他の税目をカバーできる状況にもないことが明白となっている。

 このような状況を踏まえて地方税法の改正が実施された。法定外税については、従来普通税のみが許可されていたが、当該改正地方税法により目的税の途も開かれるに至った。この法定外税の新設または変更に際しては、総務大臣との事前協議制、さらには同意を得ることを要する。事前協議・同意制は、地方分権推進委員会の勧告に基づいて、従来の許可制度を改めたものであり、国と地方団体との関係を、より対等なものにするという趣旨によるものである。しかし、同意を経ない限り法定外税を課税することができないという意味においては、従来の許可制と変わるものではないとの批判もある。この批判に対して本稿では、国税と地方税の二分法が存在する以上、各地方団体間における租税紛争を防止するためには、この制度は妥当なものであることを主張した。

 次に、現在全国で制定されている、または検討段階にある法定外普通税および法定外目的税について可能な限り調査して、一覧にまとめた。顕著な特徴として、大半が当該地方団体外に所在する者を納税義務者としていること、受益と負担の関係が必ずしも明確ではないもの、環境税のように課税客体が明確でないもの等の内容を挙げることができた。しかし、地方団体が課税権を行使する余地は超過課税と法定外税に限られているため、これらの点においても許容される範囲内であると思われる。

 上述した特徴の一つとして、環境税の代替としての法定外税が目立つ。環境税に関しては定まった定義が存在するわけではないが、一般的には、環境阻害的な取引を抑制することを目的とするもので、直接規制の補完として、財源の調達を目的とするものではないとされている。この財源の調達を目的としない租税を、租税法における「租税」として妥当しえるか否かについては議論が分かれるところである。しかし、政策税制であっても収入が多少なりとも見込まれる点や、今日の環境に配慮した社会情勢を考慮すると、そのようなものであっても、「租税」として構成しても差し支えないように思われる。実際、自動車税の不均一超過課税のように、租税と環境との統合は一部実現を見ている。今後は、税制のグリーン化はさらに進展するであろうと考えられる。

 法定外税の事例研究として、現在最も多く制定されている産業廃棄物税について概観した。既述したように、財源調達を目的としない金銭負担を法律により課することは、憲法の人権保障規定に違反しない限り許容されるべきである。産廃税に関しては、平成13年に三重県が導入して以後、12の県市が導入し、なお広がりを見せている。現在制定されている産廃税は、課税段階別に3つのタイプに分類することができる。第一に、域内の処分施設(中間処理施設および最終処分場)に搬入される産業廃棄物の排出事業者に対して申告納付させる方法、第二に、域内の最終処分業者を特別徴収義務者として、当該施設に産業廃棄物を搬入する事業者から税を徴収させる方法、第三に、最終処分業者を納税義務者として申告納付させる方法、とに分類できる。そこで、当該分類に応じて、現行の産廃税について検討することとした。

 まず、第一のタイプは、三重県と滋賀県の2県が採用している。この方法は、環境分野における汚染者負担の原則との関係において、一貫性を確保できる。しかし、納税義務者たる排出事業は莫大な数にのぼることから、一定の定め(免税点)を設定せざるを得なくなるため、結果として、大口の排出事業者のみを納税義務者とすることとなる。これは、租税の原則としての公平性の原則に背くものとなる。
 一方、最終処分業者を特別徴収義務者とする方法およびその者を納税義務者とする方法は、把握すべき事業者数が比較的少数であることから、免税点の設定は不要となり、最終処分場に搬入される産業廃棄物のすべての排出事業者に課税が及ぶことから、公平性に準拠したスキームとなる。
 このように、上記で分類した課税タイプには、それぞれメリット、デメリットが存在する。産廃税を導入した各県は、それぞれ制定地の個別事情に照らして条例を策定しているが、その内容を、三重県、鳥取県、岡山県、広島県、北九州市について考察した。この中で、特に慎重に議論すべき項目は、県際排出に係る課税権の帰属に関しての問題であることが判った。排出地と処分地が同一の域内で完結的に実施される場合には、このような問題は一切生じない。しかし、現実には、産業廃棄物は広域に移動可能な物体であり、すべての産業廃棄物が同一に地域内に留まることは考えられない。

 ここで、排出課税を採用した場合には、二重課税の問題が生ずることとなる。この問題に関して、排出課税を採用している三重県では国内で最初に産廃税を制定したことから、条文上、二重課税排除のための規定は考慮されていない。一方、排出課税を採用した後発の滋賀県では、先の三重県の他、最終処分課税を採用する奈良県と隣接することから、一定の課税免除を設けている。この規定は、要約すると、滋賀県に税収が帰属するのは、最終処分地が滋賀県の場合と、最終処分地が産廃税未導入の県で、かつ、滋賀県が産業廃棄物の発生源となる場合の二通りに限られることとなる。すなわち、産廃税導入団体が増えた際には、結局、排出課税を採りながらも、その実態は最終処分課税と変わるものではなくなってしまう。それにもかかわらず、納税事務負担や税務執行面における手数を要する、また、公平性に背くこととなる排出課税を採用することには疑問が生じる。私見としては、最終処分課税が、今後の産廃税設計の際のスタンダードな方法となるものと結論付けた。

 現在、税収が確定しているのは三重県のみであるため、産廃税の評価について、比較は行えなかったが、当初見込み額に対する実際税収額の減少、および最終処分量の減量の観点から、インセンティブ目的については、その機能を充分に発揮できているのではないかと思われる。しかし、環境税は、その目的である政策が達成されるにつれ税収が減少していくこととなるため、当該税収に係る施策の立案に関しては慎重に考慮する必要がある。

 最後に、分権時代における地方財政制度との関係において、法定外税は税収規模の面からは既存の法定税の補完的な役割を担うのみに留まるであろうが、地方団体が自主課税権を行使しての新税の制定・運用は、将来に実施されるであろう税源移譲を見据えた上では、有効な手段となるであろうと思われる。

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