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論文┃第2章 地方団体の自主課税権③

第2章 地方団体の自主課税権③

第3節 法定外普通税と法定外目的税

1.法定外普通税と法定外目的税の概要

 地方税法は、地方団体が課税することのできる税目を法律に掲げることを原則とする「法定税目中心主義」を採用しつつ、それ以外にも、地方団体が法に掲げられていない税(法定外の税)を自主的に課税することも許容している。

 地方分権推進計画は、「法定外普通税の許可制度については、より課税自主権を尊重する観点から廃止し、都道府県又は市町村が法定外普通税を新設又は変更するに当たっては、国と事前協議を行うこととする。この場合、国との同意を要することとする。」とし、「法定外目的税については、住民の受益と負担の関係が明確になり、また課税の選択の幅を広げることにもつながることから、その創設を図る。」こととし、地方税法の改正(平成12年4月1日)が行われた。

 この改正地方税法により、法定外税の新設または変更に際しては、総務大臣との事前協議制、さらには同意を得なければならない(地方税法第259条・669条・731条2項)。事前協議・同意制度は、地方分権推進委員会の勧告に基づいて、従来の許可制度を改めたもので、地方団体と国との関係を、より対等なものにするという趣旨によるものである。しかし、同意を経ない限り法定外税を課することができないという意味においては、従来の許可制と変わるものではないという批判もある 。

法定外普通税はその税収の使途において制限はないものの、法定外目的税はその税収の使途が特定される点で両者は異なるものであるが、法定税目以外のこれらの二つの課税の方法を認めることにより、地方団体および住民にとっての選択の幅が格段に拡充し、法定外税は課税自主権の強化に寄与すると解されている 。かつて、法定外税は、普通税に限り許容されていた。法定外目的税を認めない理由として、第一に、収入の調達目的のためには、法定外税は例外的なものであり、普通税の途を開いておけば足りること、第二に、本来、税は一般経費の支弁のために調達されることを本義とし、支出と直結した収入は負担金・分担金等によって賄うべきであることが挙げられる 。

2.法定外税の要件

 法定外税における総務大臣との事前協議と同意は、自主課税権を論ずる際に重要である。碓井は、「従来の許可制と変わるものではない」と主張するが、枠法としての地方税法における国の調整機能に照らせれば、事前協議と同意は、条件付ではあるが、法定外税の成立要件であると解することができる。しかし、ここで成立要件としてまず、地方税法第261条、671条、733条でいう消極要件(①国税又は他の地方税と課税標準を同じくし、かつ、住民の負担が著しく過重となること、②地方団体間における物の流通に重大な障害を与えること、③前2号に掲げるものを除くほか、国の経済施策に照らして適当でないこと)の解釈が重要となってくる。これらの3要件は、従来の許可時代の法定外普通税の消極要件をそのまま引き継がれたものである。以下、それらについて検討する。

(1) 1号要件

 地方税法第671条1号は、「国税又は他の地方税と課税標準を同じくし、かつ、住民の負担が著しく過重となること」を消極要件としている。他の地方税には、他の地方団体の地方税が含まれるほか、当該団体の地方税も含まれる。

当該団体の法定税については、法が税率等に規制を加えている趣旨からみて、原則として、法定外税を許容しないとみるべきである。一方、特定の道府県が特定の法定外税を設けたときは、その区域内にある市町村が同じ課税標準の法定外税を設けようとすると、負担の程度によっては、この消極要件への抵触が問題となり、結果的に「早い者勝ち」となる 。しかし、重複課税をすべて不適とすると、租税体系の整った現行制度では、法定外税の創設は限りなく不可能となってしまう。したがって、この要件のポイントは、「住民の負担が著しく過重になる」か否かにあり 、課税標準を同じくすることによって住民の負担に不均衡を生ずるような場合が問題となるであろう。なお、この場合の「住民」には、「当該地方団体の住民」に限定されず、ゴルフ場利用税や東京都宿泊税のように納税義務者は広く解釈されている。
しかし、これら均衡論は、規定が曖昧であるが故に、各地方団体の議会の判断や地方団体間の協議に委ねるべき問題であるといえる。

(2) 2号要件

 地方税法第671条2号は、「地方団体間における物の物流に重大な障害を与えること」を消極要件としている。法定外税は特定の地方団体が課す地域的な税目であることから、内国関税または高率で禁止的な流通課税的になる危険性があり、これを回避する趣旨で規定されている。特に、法定外目的税については、流通行為や消費行為等を課税客体とすることから抵触する可能性がある。また、この場合の「物」には、有体物のみでなく、サービス行為等も含まれる 。

 現在、多くの地方団体で導入が検討されている産業廃棄物税について(第3、4章参照)、持ち込み量が持ち出し量よりも多い「入超」自治体の問題は深刻であろうが、本要件との関係において、産業廃棄物そのものを「物」と解することができるか法解釈上問題となる余地はある。結局、周辺の関係道府県との調整が必要となる。

(3) 3号要件

 地方税法第671条3号は、「前2号に掲げるものを除く外、国の経済施策に照らして適当でないこと」を消極要件としている。規定が曖昧であるため、この規定の解釈・運用が地方分権改革において、国と地方団体との施策の調整に当たって重要な課題となることは多方面で叫ばれている。横浜市「勝馬投票権発売税」の場合も、3号要件に該当するとの理由で不同意となり、国と地方団体との施策の適切な調整が問われている。

 「国の経済施策」は、何を意味するのであるかは、金子は、「地方公共団体が新しく法定外普通税を課税するには、ほとんどの場合、何らかの形で国の経済施策の対象となる経済活動に抵触する可能性がある。そこで、自主課税権に対する国の関与が広範すぎるものとならないよう、地方税法第671条第3項の解釈上『国の経済施策』を限定的に解釈することが適当である。その際、経済施策なりその対象となる経済活動の分野によって限定することが適当である。結局、同号にいう経済施策とは、経済に関する政府の施策の方針を内閣・各省庁が実施するための方策のうち、重要なものをいうと解することが適当と考えられる 」と論じている。

 また、碓井は、「重要な租税施策が『国の経済施策』に含まれるとし、あるいは特定のしくみで、財政資金を確保し、これに一定の公共目的のために使用することも『国の経済施策』に含まれうるという横浜市の勝馬投票権発売税の不同意の理由には、飛躍がある」と指摘し、「租税施策は、それだけで経済施策に含まれるものではなく、租税政策を通じて達成しようとしている経済施策が認識できる場合に、はじめて『経済施策』と認めることができると考えられるべきである 」と述べている。

 確かに「国の経済施策」は、その時々の国民経済の状況に依存し流動的であることはやむを得ないといわざるを得ない。しかし、法定外税の新設・変更が行政権の判断に委ねられているとすれば問題である。地方税条例主義の立場からは、条例なしには課税を受けないという自由主義的な機能のほかに、財政のあり方を行政権ではなく住民が決定するという財政民主主義の理念 が反映されている。地方団体の財政のあり方を総務大臣の裁量で左右されることは、この財政民主主義の理念に反するものであると思われる。

 さらに、新たな税の導入によって、地方団体間の税源の配分も「国の経済施策」に含まれるか否かについても考えねばならない。法人税法では、損金に算入される金額は、別段の定めがあるものを除き、原価・費用・損失の金額である(法人税法22条3項)。そこで、租税公課は、企業会計上費用として認識される。したがって、費用とされる租税公課は、別段の定めに該当しなければ、損金に該当することとなり、例えば、導入される税が法人税法上損金あるいは所得税法上必要経費に算入されるのであれば、法人税あるいは所得税の税額が減少し、さらに地方税の住民税も減少することとなる 。その結果、国および他の地方団体の税収に影響を及ぼすことになる。いずれにせよ、この要件も、地方団体間の協調が必要となり、かつ、法文の運用上、財政民主主義の理念が反映されることが必要であろう。

3.非課税規定

 法定外税の成立要件に関しては、消極要件とは別に非課税規定として、①土地・家屋・物件の所在地が区域外のもの及びこれから生ずる所得、②事業の行われる事務所・事業所が区域外にある場合の事業並びにそれからの収入、③公務上又は業務上の理由による負傷、又は疾病に起因して受け取る給付で政令で定めるもの、が限定列挙されている(地方税法第262条、672条、733条の2)。このうち、1号が法定外税の導入にあたり注意すべき規定となる。

 非課税規定は、条例に対する法律の優先の原理から個別の法定外税を定める条例がどのように定めようとも、それに該当する限りは非課税扱いとなる。

 1号および2号はいずれも他の地方団体に所在する税源であり、他の地方団体との税源の競合、あるいは他の地方団体の住民に対する負担の転嫁等が行われるものを避けるため、地方団体の課税権の行使について必要な調整を加えたものであると理解されている 。したがって、この非課税規定は、実質的には、法定外税の課税管轄権の衝突を調整する意味を持っている。しかし、1号も2号も、物的基準に関する非課税であって、人的基準ではない。

また2号は、「事業」にのみ着目した行為地基準の性格も有しているが、行為地に関する一般的な基準は用意されていない。したがって、住民が当該地方団体の区域外において行う行為に課税できるかというような問題は、これらの非課税規定から直接に解答することはできない。今日の複雑な人や物の流れを前提にすると、課税管轄に関する規定としては、不十分といわざるをえない 。

 なお、後述する三重県産業廃棄物条例における納税義務者は、県外、県内を問わず産業廃棄物を排出する事業者であるが、課税客体は県内にある産業廃棄物の中間処理施設または最終処分場への搬入であることから、「汚染者負担原則」に基づき県外の納税者に課税することは許されると解されている。

※24 碓井光明「地方財政に関する地方分権改革の検証」『ジュリスト』1203号,2001年,84頁.
※25 占部・前掲注20,91頁.
※26 碓井・前掲注3,67頁.
※27 碓井・前掲注3,71頁.
※28 同様のことは、山田二郎「法定外税に対する関与と総務大臣の同意における三つの消極要件」『税』57巻2号,2002年,81頁に記載されている。
※29 碓井光明「法定外税をめぐる諸問題(上)」『自治研究』77巻1号,2001年,27頁.
※30 金子宏「勝馬投票権発売税に関する鑑定意見要旨及び補足意見」『税法学』547号,32頁.
※31 碓井・前掲注3,74頁.
※32 国家が活動するためには、それが積極的なものであれ、消極的なものであれ一定の財力が必要とされる。憲法第83条では、「国の財政を処理する権限は、国会の議決に基づいて、これを行使しなければならない」と規定し、つまり、国民の意思が財政を処理する権限を拘束していることを定めている。
※33 銀行税は、国や他の地方団体の税収が犠牲にされたうえに成り立つものである(水野忠恒「東京都外形標準課税条例の評価」『ジュリスト』1181号,2000年,6頁.)と指摘されている。
※34 占部・前掲注20,99頁.
※35 碓井・前掲注29,10頁.
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