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論文┃第2章 地方団体の自主課税権①

第2章 地方団体の自主課税権①

第1節 地方税法と税条例との関係

1.課税権に関する規定 ~租税法律主義と地方税条例主義に関して

 現在、地方団体の課税権は、地方税法によって細やかに決められている。したがって、地方団体が自らの判断によって自主的な課税を行う余地、つまり課税自主権を行使する余地は非常に限られている。

 行政権が法律に基づかずに租税を賦課徴収することができない、とすることにより、行政権による恣意的な課税から国民を保護するための原則として、租税法律主義が規定されている。憲法は、租税法律主義に関して、第30条で「国民は、法律の規定の定めるところにより、納税義務を負う」と規定し、その第84条で「あらたに租税を課し、又は現行の租税を変更するには、法律又は法律の定める条件によることを必要とする」と規定している。

 また憲法は、その第41条で「国会は国権の最高機関であって、国の唯一の立法機関である」と規定し、国会が唯一の立法機関であることを宣言した上で、租税法律主義を規定し、さらに、その第8章に「地方自治」の章を独立で設け、その第92条で「地方公共団体の組織及び運営に関する事項は、地方自治の本旨に基づいて、法律でこれを定める」と規定し、さらにその第94条で「地方公共団体は、財産を管理し、事務を処理し、及び行政を執行する権利を有し、法律の範囲内で条例を制定することができる」と規定している。

 この2つの憲法規定は、「法律」によって、地方団体の組織および運営に関する事項を定め、「法律の範囲内」で条例制定権を認めているが、国会が定めた地方自治法第223条は、「普通地方公共団体は、法律の定めるところにより、地方税を賦課徴収することができる」と規定しており、また、地方税法第2条において地方団体の課税権について、「地方団体は、この法律の定めるところによって、地方税を賦課徴収することができる」と規定し、さらにその第3条1項で、「地方団体は、その地方税の税目、課税客体、課税標準、税率その他賦課徴収について定めをするには、当該地方団体の条例によらなければならない」と規定し、いわゆる地方税条例主義の原則を定めている 。

2.地方団体の課税権の法的根拠

 地方団体の課税権の法的根拠をどう解釈するかについての見解は多岐にわたる。大別すると、国会が定める「法律」によって賦与されると解する説、すなわち法律付与説 と、「憲法」自身によって賦与されると解する説、すなわち憲法付与説、とに分けることができる 。以下、各説についてまとめることとする。

(1) 法律付与説

これは、憲法第84条と第30条との関係について、まず、憲法第84条は租税法律主義が憲法第41条によって課税には常に法律を必要としていると解した上で、租税一般(国税および地方税)について国民の課税承諾権という近代法における大原則を定めたものである。そして憲法第30条は同旨のことを国民の義務の側面から規定したと解する。

すなわち、これら憲法の条項でいう「法律」は、条文の文理解釈からしていずれも国会制定の「法律」でなければならないとし、地方議会が定める「条例」を含まないと解する。これを地方税法律主義といい、地方団体は「法律」たる地方自治法第223条および地方税法第2条によってはじめて課税権が賦与されることとなる。

 この法律付与説の理解の背後には、憲法第92条の「地方自治の本旨」を消極に解し、課税自主権の程度も立法裁量の当否の問題と認識し、結果において、国の統制権を重視して、地方自治を軽視する思想が存するとの批判がある 。

(2) 憲法付与説

 この説は、通説とされるものであり、地方団体の課税権を「国からの委任」と解する説と、地方団体が有する「自治権の一環」と解する説に分けることができる。

 前者は、地方団体の条例は、憲法第84条の租税法律主義の規定でいう「法律」に含まれるとし、租税の賦課は、あくまで国会の定立する法律に基づかなければならないが、地方税に関する法律は課税要件について条例に明確化することで委任できるとする考え方である 。

 他方、後者は、「法律」に条例は含まれると説くものと、これを否定して地方団体の課税権を租税法律主義の例外と位置づけるものがある。この租税法律主義例外説は、さらに、憲法第92条ないし第94条に地方団体の課税権の根拠を求める説と、同条にその根拠を求めると同時に、地方団体の課税権が租税法律主義の本質的要請である課税承諾権を内包することを理由に、形式的には「租税法律主義の例外」ではあるが、実質的には「例外」ではないとする説がある。

 これらいずれの説も、国税において租税法律主義が妥当するのと同様に、地方税については地方税条例主義が妥当すると解している 。したがって、この説は、地方税法第2条と第3条1項との関係に一貫性を見出すことができると思われる。

3.課税自主権と地方課税のあり方

 
 上述のように、地方税の賦課は条例に基づいて行われるが、地方団体はこれを独自の判断で自由に行いうるわけではなく、国会で定立した法律の枠内においてのみ許容される。つまり、地方団体が行政サービスを提供するに当っては地方自治法により、そして、租税を賦課徴収するためには地方税法によって共に制約を受けることとなる。現在、地方税についても、この「枠法」の範囲内でしか税目を起こし、賦課徴収することはできない 。

 これは、東京都外形標準課税条例無効確認等請求事件(以下、「銀行税」という)第一審判決(裁判長裁判官 藤山雅之、裁判官 村田斎志、廣澤論)において、「地方団体は、法律の定める範囲内でのみ課税自主権を行使できるに過ぎない」とした、本件条例の地方税法に対する違法判決からも明白である。

しかし、国と地方との関係が対等・協力に改められた地方分権一括法が制定された以後、地方税法と税条例の関係についてそれぞれの役割分担を明らかにしていかねばならないと考える。確かに、憲法第84条が「あらたに租税を課し、又は現行の租税を変更するには、法律又は法律の定める条件によることを必要とする」と規定し、地方自治法第223条が「普通地方公共団体は、法律の定めるところにより、地方税を賦課徴収することができる」と定めているのを鑑みれば、国の法律による制約は当然であると考えられるが、憲法第92条以下の定める地方自治の本旨の理念および自主財政主義の原則 に鑑みれば、法律は、地方税に関するあらゆる事項を規律できるものと位置づけられるべきではなく、各地方団体の課税権に必要最小限の共通的・統一的な地方団体相互間の均衡維持のための制約を加えることを目的として制定されるべきもの と位置づけることが望ましい。それゆえ、地方税法は、国と地方団体の税源配分に関する合理的な基準あるいは標準を示すべきものとし、これは結果として地方団体の自主性を尊重し、憲法に規定する地方自治を制度的に保障することとなる。
したがって、枠法の機能、役割が縮小し、自主法である条例の比重が高まれば、条例で決定すべき内容、範囲はそれだけ増えることとなる。そのため、条例間の調整、紛争解決という国の役割が残る以上は大枠を定めた枠法は不可欠となるが、地方税法と税条例の比重を逆転させていくことが重要となるであろう。
そこで、地方税原則を確認した後、条例における課税権の行使である法定外税について概観していく。

※3 碓井光明『要説 地方税のしくみと法』学陽書房,2001年,3頁以下.
※4 地方団体の課税権は、地方自治法第223条および地方税法によって賦与されたものであるとの考え方を採る判例として、福岡地裁昭和55・6・5判時966号3頁
※5 清水敬次「国税と地方税―自主課税権をめぐって」ジュリスト増刊・総合特集33『日本の税金』,1984年,81頁.
※6 石島弘「地方公共団体の課税権と『地方税法』-自主課税権をめぐって」『税』54巻10号,1999年,4頁.
※7 木村弘之亮『租税法学』税務経理協会,1999年,103頁.
※8 石島・前掲注6,8頁.
※9 例えば、村井正「地方税法の将来像」『税』57巻3号,2002年.参照
 村井は、この「枠法」に関して、国税と地方税の2分法がある以上、この機能が必要である旨を述べている。
※10 金子宏『租税法(第8版)』弘文堂,2001年,93頁以下.
※11 新井隆一「地方分権と地方税法」『旬刊国税解説速報』37巻,1997年,13頁.
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