論文┃はじめに
はじめに
行政ニーズが多様化、複雑化する中で、住民に密着した行政サービスを担う地方団体(※1)の果たすべき役割はますます大きくなっていると考えられる。しかし、住民の様々な要請に応えるためには多くの歳入が確保されなければならない。地方自治の基本原則に関しては、日本国憲法第92条は、「地方公共団体の組織及び運営に関する事項は、地方自治の本旨に基づいて、法律でこれを定める」と規定し、地方団体は各種の機能を有している。これらの機能を行使するには財政の裏付けが不可欠であり、この財政的な裏付けの基礎となるのが、租税である。
ところで、近年、地方税を取り巻く状況は、地方分権化、課税自主権化、税源配分の方向に向けてドラスチックに変化しつつあり、地方税の立法問題が大きく取沙汰されている。東京都におけるいわゆる「銀行税」に係る訴訟問題、多数の地方団体による新税の導入、法人事業税における外形標準課税の導入等、活発な動きを呈している。これらの動きは、平成10年に閣議決定された地方分権推進計画、さらにこの計画を受けて平成12年より施行した地方分権一括法による地方団体の課税自主権の強化によるところが大きい。従来、法定外税に関しては、普通税のみが認められていたが、今般の改正を受け、目的税の導入も認められるに至った。
政府は近年、地方税財源の充実確保のため課税自主権の尊重、超過課税の活用および法定外税の積極導入など、歳入面から地方団体が自ら行財政基盤の強化を促進するよう、相次いでその方策を打ち出している。しかし、税収の地域的ばらつき、新たな税源を見出すことの困難さなど、先行きの見通しは厳しい状況にある。現在、地方における財源不足は14兆円にのぼり、地方税に占める法定外税の規模は平成13年度決算額で約288億円と微々たるものである。法定外税の創設は、現在の財政状況を緩和するための税収確保策であるという色彩も濃いが、積極的には地方分権推進のための財源の充実強化であるとの評価もあり得るであろう。そして、税の徴収を通じて特定の行政課題を解決しようとの動きも見受けられる。
そこで、本稿では、地方分権一括法における地方税法の改正のうち、特に法定外税について、その制定の経緯と現状を確認した上で、最も多く制定あるいは検討されている産業廃棄物税に関する事例を手がかりに、分権時代における地方課税について言及していくこととする。
類似の概念として、「地方公共団体」「地方自治体」がある。前者は憲法や地方自治法などで用いられる用語であって、普通地方公共団体である都道府県、市町村の他、一部事務組合など特別地方公共団体を含む概念である。後者は、地方自治を強調する用語として地方公共団体と同様の概念として使用されている。