論文┃第4章 産業廃棄物に係る法定外目的税の実態について②
第2節 三重県産業廃棄物税
1.経緯
三重県では、持続的発展が可能な循環型社会の創造を目指し、「環境と経済を同軸で捉える」との独自の観点から、環境配慮が経済的価値の創造へ、経済的価値の追求が環境配慮へと、お互いが相乗効果を発揮する環境経営の推進を目指し、地方分権一括法の施行に向け、平成11年5月に県税若手グループ研究会を発足させ平成12年「産業廃棄物埋立税(仮称)」を公表した。その後、公式の検討では、排出段階への課税の可能性について検討が進められてきた。
当初、排出事業者を納税義務者として申告納付させるA案、排出事業者を納税義務者とし中間処理業者と最終処分業者を特別徴収義務者とするA′案、最終処分場に持ち込む事業者を納税義務者とし最終処分業者を特別徴収義務者とするB案、最終処分業者を納税義務者とするC案、の4案を公表し、検討が進められた。その結果、産業廃棄物の排出をコントロールできることから、排出事業者に直接課税する方式であるA案が採用されることとなり、平成13年6月29日に同条例が全会一致で可決成立し、7月3日に総務大臣に対しての協議の申し出がなされた。数回にわたる審議を経て地方財政審議会は、住民の負担が著しく過重にならないこと、物の流通に重大な障害を与えないこと、等の同意要件をクリアし同意することが適当である旨の結論を出し、同年9月28日、総務大臣により「産業廃棄物税」の新設について同意することが決定され、平成14年4月1日から施行されている。
2.概要(三重県産業廃棄物税条例第1条~19条)
(1) 課税の根拠
産業廃棄物行政については、三重県としては、排出者責任の原則に立脚し、産業廃棄物処理業者に対する許認可等の規制行政を行う役割を担ってきた。今後は、循環型社会の構築を目指す中で最終処分場をめぐる様々な状況を踏まえ、従来の枠を超えた積極的な施策展開を図ることは避けて通ることができない喫緊の課題である。
さらに、最終処分場の逼迫を一つの要因として不法投棄などの不適正処理が増加し、その結果、産業廃棄物処理に対する住民の不信感が増大し、新たな産業廃棄物処理施設設置が困難になるという悪循環が生じている。また、関西圏、中京圏という大都市圏に挟まれた地理的状況にあり、不法投棄が多発しやすい中で、このような悪循環を断ち切るためにも従来の枠を超えた事業展開が必要であった。
そこで、地方税法第4条6項の規定に基づき、産業廃棄物の発生抑制、再生、減量その他適正な処理に係る施策に要する費用に充てることを目的として、「産業廃棄物税」を課するものとする。
(2) 課税客体
中間処理施設または最終処分場への産業廃棄物の搬入量(中間処理施設への搬入には、焼却・脱水の場合0.1、乾燥・中和の場合0.3、油水分離の場合0.2を乗じる)
(3) 納税義務者
事業所ごとに、産業廃棄物の中間処理施設または最終処分場への搬入に対し、当該産業廃棄物を排出する事業者(県内・県外を問わない)
(4) 徴収方法
申告納付
(5) 税率
1トンにつき1,000円
(6) 非課税事項
①産業廃棄物を排出する事業者が、当該産業廃棄物を自ら有する中間処理施設において処分するための搬入
②県内の課税対象となる中間処理施設で処理された後の産業廃棄物の搬入
③年間排出量1,000t未満の企業は非課税
④90%以上のリサイクル実績を有することにつき知事が認定した施設、がれき類の破砕施設への搬入は非課税
(7) 収入額
平成14年度実績で、1億2,580万円(申告件数:県内25件、県外13件)
(8) 税収使途
県内に納付された産業廃棄物税額から産廃税の賦課徴収に要する費用を控除した残額を、産業廃棄物の発生抑制、再生、減量その他適正な処理に係る施策に要する費用に充てる(廃棄物処理センター適正処理支援事業費、産業廃棄物監視強化対策事業費、産業廃棄物抑制等事業費補助金、リサイクル技術研究開発費、など)