修繕費と資本的支出の違い:税務調査のポイント
所有している資産に対する改良費や復旧費用として支出した金額が、修繕費に該当するのか、資本的支出に該当するのかは、税務上、重要な判断となってきます。
修繕費と資本的支出の違い
修繕費とは
原状回復のための費用として、全額当期の経費に計上されます。
資本的支出とは
資産の価値増加が生じたと考えます。
一旦資産計上し、法定耐用年数に亘って、減価償却を通じて費用化されます。
修繕費と資本的支出の判定方法
資産に対する支出が、修繕費か資本的支出かのいずれに該当するかは、「形式基準」と「実質基準」によって判断していきます。
節税対策として、修理・改良の費用を支出する場合は、「実質基準」にフォーカスを当てて当期の費用になるのか、或いは資産計上になるのかを判断することになります。
資産計上になる場合は、節税効果は薄くなります。
よく勘違いされる例として、
金額が大きいから資産計上になる、とお聞きしますが、あくまで実態を鑑みての判断になります。
つまり、金額の大小にかかわらず、原状回復のための費用であれば、修繕費として経費に計上できます。
修繕費・資本的支出の判定のフロー
まず、「実質基準」によって、修理改良等のための支出なのか、それとも資産の価値増加をもたらす支出なのかを判定します。
資産の価値増加とは、部品等の取り換えを機に、高品質なものに換えた、とか、グレードアップさせた、ということになります。
次に、下記の「形式基準」の各項目を、上から順に判定していきます。該当する項目が生じた時点で、修繕費と判定します。
全項目について該当しない場合は、「実質基準」によって再度判定することになります。
- 修理改良等のための支出で、金額が20万円未満のもの
- 修理改良等のための支出で、周期が概ね3年以下のもの
- 明らかに資本的支出に該当するか否かが不明なもので、金額が60万円未満
または、前期末取得価額の10%以下のもの
あくまで、金額の大小を問わず、実態を鑑みての判定となります。
「形式基準」を採用するのは、
・実質基準で判定した場合、資本的支出に該当するが、支出金額が少額の場合
・修繕費と資本的支出の区分が困難な場合
となりますので、ご注意ください。
修理改良等の支出は、金額が多額にのぼる場合もありますので、修繕費とするのか、資本的支出とするのかで、当期の経費計上額が大きく相違してきます。もちろん、税額に大きな差が生じてきます。
また、税務調査での調査ポイントの一つにもなりますので、その判定は慎重に行う必要があります。