譲渡所得の長期と短期:土地等の譲渡
税法では、規定を知っているか否かにより、納付税額に大きな差が生ずるなど有利・不利に働くことが多くあります。
例えば、個人の土地建物等の譲渡についてご紹介いたします。
土地や建物等を譲渡する際の所得税は、「長期譲渡所得」と「短期譲渡所得」に分けて計算します。
- 長期譲渡所得
所有期間が5年を超える土地建物等を譲渡した場合
所得税の税率:15% - 短期譲渡所得
所有期間が5年以下の土地建物等を譲渡した場合
所得税の税率:30%
所有期間の判定は、土地建物等の取得の日から、譲渡(売却)した年の1月1日まで、となります。
譲渡した日、を基準とするわけではありません。
したがって、取得日から譲渡日までは5年を超えている場合でも、その年の1月1日時点では、5年以下であるケースもあり得ます。
この場合は、短期譲渡所得となり、高い税率で所得税が課されることになります。
ここで、所有期間の判定に際して、取得の日がいつか? がポイントになります。
原則的には、引渡し基準が採用されるため、土地建物等の「引渡し日」となります(所基通36-12)。
「引渡し日」については契約ごとに異なるのが通常であります。
一般的には、契約者同士が契約書で「引渡し日」を決めている場合が多いのではないでしょうか。
例えば、住宅の場合、勤務先の転勤等の都合により、代金の決済が完了した場合であっても、年度末の引渡し、などと設定することもあるようです。
このような場合は、契約書にその旨の一文が記載されているはずですので、そちらで確認をとることができます。
また、取得の日を、「引渡し日」とせず、納税者の選択により「契約の効力発生日」とすることもできます(所基通36-12)。この場合の取得日は、契約の効力発生日となる売買契約締結日、となります。
契約の効力発生日と引渡し日が年を跨いでいる場合、選択によっては長期譲渡所得が短期譲渡所得になる場合があるため注意が必要となります。
この様に、法律の規定を知っているか否かで、わずかの違いで納付する税額に大きな差が生じてきます。
いずれを選択した場合であっても適法な処理となるため、多く納め過ぎたからといって税務署は指摘してくれません。少ないと判断された場合は指摘される可能性はありますが…
知らなかった、は通用しませんので、ご注意ください。