減価償却費とは:税金対策と上手な活用方法
お客様との会話でよく、「利益が出ているため、機械や車、備品等の固定資産の購入を検討しているが、税金対策になるのか?」との質問を受けます。
その際、「多少の税金対策にはなりますが、お客様が期待されている程の節税効果はありませんよ。」とお答えしています。
減価償却とは、3要素から成っています。
①取得価額、②残存価額、③耐用年数
取得価額とは、資産を購入するために要した金額をいい、これには、運送費等の附随費用も含まれます。
残存価額とは、現行法ではあまり気にする必要はありませんので割愛いたします。
耐用年数とは、資産の区分種類ごとに法定されています。
そこで、これらの3要素を用いての取得初年度の減価償却費は、
取得価額 × 償却率 × 〇〇月/12月
で計算します。この「〇〇月」は、当期の事業供用期間となります。
例えば、3月決算法人で、1月に購入した固定資産の使用を直ちに開始した場合は「3月/12月」となります。
あくまで、償却できるのは、事業に使用した期間となります。
当期の利益見込みがある程度見えてくるのが、期首から概ね10か月前後となります。その時点から固定資産を購入しても、節税効果としてはあまり大きいとは言えません。
では、どうしたらいいのでしょうか?
事業年度の中途において、税金対策を目論んでの資産購入であれば、次のようにするのがお勧めとなります。
- 中古資産を購入する
中古資産の場合は、耐用年数が短く設定されますので、たとえ当期の事業供用月数が短くても、耐用年数を基に設定される償却率が大きいため、結果としての減価償却費は大きくなります。
>>詳しくは「中古資産を購入した場合│早期の費用化による節税」をご覧ください。 - 30万円未満の資産に限定して取得する
中小企業の場合、30万円未満の資産については、その合計額が300万円に達するまで、全額を当期の損金に計上することができます。
したがって、ある程度の税金対策になるのではないでしょうか。
なお、30万円未満の判定は、一個または一対のもの、となりますのでご注意ください。 - 税額控除制度、特別償却制度の活用を検討する
租税特別措置法において、政策的見地から優遇税制が設けられています。
要件に該当すると、法人税が減税されたり、所得が圧縮されたりなどの有利な規定を適用することができます。
減価償却費の本来の目的は、現金支出を伴わない費用であり、資産の価値目減り分を減価償却費を通して費用化することにより、固定資産へ投下した資本を回収することであります。
そのため、取得価額や償却率、耐用年数を厳格に法定しています。
事業年度の中途、特に後半において、固定資産を購入しても、税金対策としてはさほど意味をなさないことはお分かりいただけたと思います。
あとは、少額の物品を購入するなどの対策を講じることになりますが、本質論として、「今必要ではないけれど、税金を払いたくないから購入する」というのは敬遠してください。
必ず、資金繰りに悪影響を及ぼしますので。
西宮市・神戸市の税理士「松尾会計事務所」では、コンサルティングを主要業務とする税理士事務所であるため、税金対策はもとよりキャッシュフロー経営に主眼を置いた関与をいたしております。