贈与の成立について②:贈与税の申告
贈与税の申告を行うと、贈与が成立したことになるのか!?
先般の記事で、名義預金や名義株となる例を用いて、「贈与したつもり」であっても実際は「贈与の事実なし」となるケースについてご説明いたしました。
>>「贈与の成立について①:名義預金と名義株」はこちらをご覧ください。
贈与は民法上双務契約となり、あげる側・もらう側が、あげます・もらいます、と意思表示することによってはじめて成立する契約形態であります。
では、贈与契約書を作成して、贈与税申告を行っていれば、「贈与が成立」するのか、というとそうもいきません。
よく勘違いされる例として、贈与税申告書に税務署の印鑑が押印されていることから、それをもって贈与が認められた、と仰る方もいます。
これは、贈与税に限らず他の法人税や消費税、所得税も同様でありますが、この税務署の印は「受付印」であります。「〇月〇日に申告書を受け付けました」ということを意味するものであります。
【贈与税の申告・納付を行っていたにもかかわらず、贈与が認められなかった事例】
平成19年6月26日の裁決事例として、
『・・・贈与税の申告及び納税の事実は贈与事実を認定する上での一つの証拠としては認められるものの、贈与事実の存否は飽くまでも具体的な事実関係を総合的に勘案して判断すべきと解するのが相当である』
として、贈与税の申告・納付が成されていたものの、その事実関係から、贈与がなかったものとして、相続財産に含まれています。
平成19年6月26日の裁決事例として、
『・・・贈与税の申告及び納税の事実は贈与事実を認定する上での一つの証拠としては認められるものの、贈与事実の存否は飽くまでも具体的な事実関係を総合的に勘案して判断すべきと解するのが相当である』
として、贈与税の申告・納付が成されていたものの、その事実関係から、贈与がなかったものとして、相続財産に含まれています。
「贈与の事実」を鑑みた贈与方法の例
- 客観的に贈与の事実が証明できるように、贈与のあった日付や内容を記載した贈与契約書を作成する。
- 贈与財産を、受贈者自身が管理する。
- 贈与財産が現金等の場合、預金口座の振込等で記録を残しておく。
- 通帳やカード、印鑑を受贈者が保有する。
- 口座の入出金についても、受贈者が自ら管理する。
- 不動産など、登記が必要なものについては、所有権移転登記をし、維持管理のコストや、当該不動産からもたらされる利益を、受贈者の口座で管理する。
これらは、ほんの一例にすぎませんが、予め骨組みを創り、徹底して行わない限り「贈与の成立」は困難を極めます。
正しい相続対策を行わないと結果として無駄な労力、となり得ますので注意が必要であります。