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7.引継ぎのための実務:患者・スタッフ・保険遡及手続・改修工事等

患者の引継ぎ

クリニックを事業承継するに当たっての要諦は、患者の引継ぎにあります。

現在加療中の患者であっても、経験上、約70%の患者しか引継ぎはできません。
クリニックの来院患者の属性を調べてみますと、一般的には慢性期が80%、急性期が20%、といった構成になっています。

引継ぎができている約70%の患者の多くは、この内の慢性期の患者となっております。
患者離れを防ぐには、ここに注力する必要性があることは言うまでもありません。

治療方針を変えないこと、薬の処方内容と処方期間を変えないこと、検査内容と検査期間を変えないこと、
等といった具合に、受診時にに患者がストレスを感じないようにすることが大事になってきます。

保険の遡及手続

医療法人の場合は、理事長ほか理事の交代により経営権を譲渡するため、事業所そのものには何の変化もなく、保険請求上も実務的に何ら変わることがありません。

ところが、個人診療所の場合の事業承継は、新旧クリニックの経営者が変わることを意味することから、保険医療機関コードも新しくなり、全く別の医療機関としてスタートすることになります。

例えば、4月1日より新規に承継する場合、旧クリニックは3月31日で廃止の手続を行う必要があります。
原則的な手続きとしては、4月1日付で保健所に開設許可申請と、厚生局に対して、保険医療機関の指定申請を同時に行います。

ところが、厚生局から保険医療機関の指定がおりるまでの約1か月間は保険診療ができず、事実上、クリニックを開けられない状態に陥ってしまいます。

そこで、4月1日より保険診療を行うことができるように定めたものが「遡及手続」となります。
遡及のための要件としては、承継前、少なくとも1か月前には従事医師として勤務している必要があり、その届出が必要となります。

事前の勤務実績により、患者の引継ぎが完了したと認定されるのです。

改修工事のスケジュール

先生方が承継される(予定の)クリニックは、約20年~30年前に新築されたものが一般的であります。

当時と今とでは、内装の流行りもありますが、設計概念が根本的に異なっています。
電子カルテが当然になった現在と、紙カルテ時代とでは、受付カウンターを中心としたスタッフの動線も大きく異なります。
また、パソコンを介して医療機器同士を連携させるためには、LAN工事をはじめとした電気工事も必要不可欠となります。

身障者対応のトイレやバリアフリー等のユニバーサルデザインも検討しなければなりません。
水回りや電気工事の改修の場合、まとまった工期が必要になりますので、できるだけ休診日を作らないようにスケジューリングしなければなりません。

休診日だけでなく、大型連休や年末年始、お盆といった休暇を利用して工期を分けることも検討に値します。
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