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4.クリニックの評価:営業権の評価

営業権の評価方法

基本的な考え方

クリニックを譲渡しようとした時に、一体いくらで売れるのか? という素朴な疑問を抱かれると思われます。

ひと昔前では、医業収入の3か月分、であるとか、半年分であるとかの、漠然とした相場観に基づいた取引がなされていました。

現在に至っても様々な評価方法が存在しますが、契約者双方が納得できる根拠は何であるか、という観点に立って探っていきたいと思います。

まず、基本になるのは「年間の利益」となります。
個人診療所の場合であれば、個人確定申告書の医業収入から原価・販売費及び一般管理費を控除した金額となります。

他方、医療法人の場合は、法人の経費の中に理事報酬が含まれていますので、法人の税引前利益に当該理事報酬の額を加算した金額を基準に考えていきます。

(例)
前提条件
● 医業収入:5,000万円
● 医業原価:1,500万円
● 販管費 :2,000万円
● 理事報酬:1,200万円

個人診療所
5,000万円-(1,500万円+2,000万円)=1,500万円

医療法人
5,000万円-(1,500万円+2,000万円+1,200万円)=300万円

※上記の例の様に、営業権の評価基準となる金額は、法人・個人による違いはなく、あくまでもクリニックから生じた営業活動の結果をその基本として用いることになります。

そして、最終的には、この基準金額に調整係数(1~2)を乗じて算出したものを営業権とし、当該金額に事業用資産の残存価値を加味して譲渡代金とする方法が一般的であります。

属人性が強く承継しにくい営業権

盛況なクリニックだからといっても、そのままの規模を承継できるとは限りません。

注意しなければならないのは、院長個人のスキル(専門性)やパーソナリティー(性格)が強すぎる場合です。
クリニックの流行る要素の大部分は、属人的なものであることは否めません。
したがって、承継する場合には、ある程度割り引いてその営業権を評価する必要があるのです。

逆に、属人性が低い要素としては、クリニックの立地が挙げられます。
場所が良いから集患できている場合は、営業権の評価としてもプラス要因であるといえます。

つまり・・・

最終的な評価額としては、契約当事者双方が納得し得る合理的な金額であることが重要となります。あくまでも「経済合理性のある取引」を基準に考えます。

したがって、利益額など具体的な金額で査定ができる定量的な評価額は問題ないのですが、個人的な主観が介入してくる定性的な評価額には、納得性の欠如という意味においては課題が残ります。
そのためにも、定量評価の基礎となるクリニックの財務諸表を、日頃から磨いておく必要があります。
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