使用貸借とみなし贈与について:親族間の家賃の設定
使用貸借契約に基づく家賃の設定:親族間の場合
使用貸借契約とは
不動産の賃借取引において、特に親族間であれば使用貸借として無償、または低廉で家賃を設定するケースが多くあります。
当事者の一方(借主)が相手方(貸主)からある物を受け取ってその物を無償で使用および収益した後に返還することを約することによって成立する契約(民法593条以下)
個人間取引であれば、所得税法上は時価課税を問われることはありません。
また、相続税法基本通達9-10では、「その経済的利益が少額である場合や課税上弊害がないと認められる場合には贈与認定をしない」とされています。
使用貸借契約の留意点
例えば、不動産賃貸業を営んでいる親が、個人事業主である子へ、事務所として一室を使用貸借または低廉での貸付けをした場合を考えてみます。
この場合、第三者に賃借している他の部屋の賃料相当額が時価として参考になると考えられます。
つまり、時価と実際に受け取る賃料相当額(使用貸借の場合はゼロ)との差額が、「経済的利益」という概念になります。
民法上、親族間では扶養義務が生じているため「使用貸借」という考えが存すると言われています。
そこで、経済的利益が少額の場合や課税上弊害がないと認められる場合には、贈与税が課されないこととされています。
上記の設例の場合、
① 事務所として賃借することが、扶養義務の履行の範囲を超越したものであるか否か
② 第三者へ賃借する場合の賃料が明確となっているため、反射的に経済的利益の額が客観的に把握できること
③ ②の経済的利益の額が少額であるといえるか否か
の3点が争点になると考えられます。
何れも、ハウツーで決めることはできず、何度もご紹介している税法の世界でよく使われる「事実認定」が大きく左右すると考えられます。
つまり、その親族の年齢、事業の内容、第三者への家賃の金額、その他の周辺事情を鑑みて、使用貸借とすべきか否かの制度設計をすべきと考えられます。
西宮市・神戸市の税理士「松尾会計事務所」からのご提案の一例としては、
- 上述の周辺事情を鑑みて、使用貸借とする。
- 贈与税の基礎控除を活用して、その範囲内で家賃を設定し、
経済的利益と家賃との差額を贈与として申告を行う。 - 上記の場合、贈与税の申告を行う行わない以前の問題として、経済的利益と家賃との差額が通達にいう「少額」に該当するであろう場合には、その旨を検討する。
各税法を横断的に解釈することにより、上手な制度設計ができるのです。